子どもたちが、変わっていった瞬間。
安心して挑戦できる環境の中で、子どもたちがどう変わっていったか。実際にあった出来事から、いくつかご紹介します。
これらの物語は、公立小中学校教員として30年以上向き合ってきた学校現場の経験や、算数教科指導員・初任者指導・授業研究助言といった専門的な立場、そして自ら教育事業を運営してきた実践の中から生まれたものです。
ソーラン節と学年づくり
その学年は、最初からまとまっていたわけではありませんでした。
小学5年生の学年集団。運動会でソーラン節に取り組むことになったとき、子どもたちの意識は、まず「振りを覚えること」「動きを合わせること」に向いていました。腰を落とし、腕を大きく振る——技術的な完成度を追いかける日々です。
けれど、練習を重ねるうちに、校庭の空気が少しずつ変わっていきました。
うまく踊れない友達に、誰かが声をかける。
励まし合う声が増えていく。
いつの間にか、子どもたちの関心は「自分がうまく踊れるか」から、「みんなで成功させたい」へと変わっていました。
本番の日、校庭には保護者や地域の方が見守る中、子どもたちはソーラン節を踊りきりました。演技が終わった瞬間、大きな一体感が生まれ、涙を流す子どもたちの姿もありました。
保護者の方々からも、感動したという声が数多く寄せられました。
その後、この学年のソーラン節は地域のお祭りや舞台にも招待され、披露する機会をいただきました。子どもたちは、大きな達成感と自信を得ました。
この事例で伝えたいこと
私が大切にしているのは、踊りを上手にすることだけではありません。一つの目標に向かって仲間と協力し、挑戦し、支え合い、やり遂げる経験です。子どもたちの成長は、技術だけでなく、人とのつながりや自己肯定感にも表れます。私は、そうした学びを大切にしています。
全校集会の司会をした男の子
その男の子は、人前に出ることが苦手でした。
発表の途中で言葉が出なくなり、そのまま固まってしまう。時には、涙があふれてしまうこともありました。自信があるタイプの子ではなく、人前に立つと、いつも不安が先に立ってしまうようでした。
それでも、彼は挑戦をやめませんでした。うまくいかない日があっても、また次の機会に手を挙げる。少しずつ、少しずつ、前に出る回数を重ねていきました。
変わっていったのは、彼だけではありません。周りの子どもたちも、急かさず、笑わず、責めず、ただ待つことを覚えていきました。
失敗しても大丈夫だと思える空気が、教室の中に少しずつ育っていきました。その空気こそが、彼が挑戦を続けるための土台になっていたのだと思います。
6年生になる頃、彼は児童会役員に立候補しました。そして、全校の児童が見守る中、全校集会の司会という大役を務めるまでになりました。
この事例で伝えたいこと
大切なのは、子どもを無理に変えることではありません。安心して挑戦できる環境をつくることです。子どもは自分のペースで成長します。周囲の支えや待つ姿勢も、大切な教育の一部だと考えています。
吃音のある男の子
その男の子と出会ったのは、中学1年生の春でした。
事前の申し送りには、「吃音があります」とだけ書かれていました。正直、最初はどう接したらよいか、私も考えました。
けれど実際に会ってみると、それはその子の個性の一部でしかありませんでした。話し方には独特のリズムがあり、言葉を選ぶ間には、その子なりの表現力や雰囲気がありました。むしろ、周囲を和ませる魅力すらあったのです。次第に私は、それを「直すべきもの」とは感じなくなっていきました。
私が心掛けたのは、特別扱いをしないことでした。無理に直そうとはせず、かといって避けることもせず、一人の生徒として関わり続けました。
その子は、人前に出て発表もしました。学級の中でも自然に受け入れられ、周囲の子どもたちも、彼らしさをそのまま認めていきました。
私はただ、「今のままでも大丈夫」というメッセージを伝え続けました。
この事例で伝えたいこと
教育は、子どもを型にはめることではありません。違いをなくすことでもありません。一人ひとりの個性や特性を認め、その人らしく生きられるよう支えることだと考えています。
学級崩壊からの再出発
| 対象 | 学級全体 |
| 背景 | 学級崩壊・休職を経験。効率や成果、見栄えを重視していた部分があった |
| 取り組み | ある先輩教師との出会いをきっかけに、子どもを信じ温かく関わる姿勢へ転換 |
| 変化 | 授業や学級の空気が、少しずつ変わっていった |
| 学び | 人はすぐには変わらない。自分自身が学び続ける必要がある |
こうした子どもたちとの関わりは、現在運営しているオンラインコミュニティ「うちゅラボ」にもつながっています。
事例は今後も随時追加していきます。